入院と外来の医療費はどうやって計算するの?診療報酬について

病院だよりDPC, レセプト, 診療報酬

病院の経営で重要な要素となるのが診療報酬です。職員に支払われる給料や経費の収入源となるわけですから、病院で働く職員は知っておくことが大切です。以前にも医事課の紹介などで何度か説明した診療報酬ですが、今回は診療報酬の仕組みや外来・入院の医療費などに絞って説明していきたいと思います。

医療保険制度

国民のだれもが、必要な時に適切な医療を受けることができるように協同して準備しておく仕組みがあります。「医療保障」には以下の2種類があります。

  1. 保険による保障
    • 一般的な病気やケガの医療費
  2. 公費(国や地方公共団体が負担)
    • 戦傷病者や感染症などは医療費の全額あるいは一部を負担してくれる

保険証の種類を2種類あり国保と社保があります。

  • 国保(国民健康保険):主に各市町村の国民健康保険・後期高齢者保健etc
  • 社保(社会保険):主に全国健康保険協会(協会けんぽ)、共済、組合、船員etc

保険証を見ると様々な種類があることがわかります。例えば共済組合だと公立学校共済組合や地方公務員共済組合などがあったりします。

医療保険制度では医療費を公費で負担する制度があり、生活保護を受けているだったり結核など国が定める特定の病気にかかった場合など、国や自治体が「公費」すなわち「税金」によって医療費を負担する制度のことです。公費負担医療としては以下のようなものがあります。

  1. 福祉的給付
    • 生活保護などを受けている人や、18歳未満の児童などを保証する制度。沖縄県では中学卒業まで医療負担をなしとする見通しになっています。 生活保護法、子供医療費助成制度など
  2. 強制措置に伴う医療
    • 結核やその他の感染症予防(新型コロナも対象です)、精神障がい者への自立支援など 精神保健福祉法、感染症法など
  3. 障碍者などの更生
    • 障がい者や障がい児、病気やケガによって心身に障害を負った人の更生を支援する制度 重度心身障害医療費助成、身体障碍者福祉法など
  4. 保障的給付
    • 第2次世界大戦時に軍人や軍属だった人、原爆被害者、公害で健康被害を受けた人などへの補償を行う制度 原爆被害者援護法、戦傷病者特別援護法など
  5. 治療研究給付
    • 原因不明だったり、治療方法が確立していない病気の治療や研究を助成する制度 難病等医療費助成制度など

年齢によっても医療費負担の割合が異なります。国民健康保険だと多くの場合3割負担ですが、70歳以上だと1~2割の負担になります。70歳~74歳は生年月日により負担額が異なっていたり、75歳以上でも現役並みの所得がある方は3割負担だったりと各人によって医療費が異なるので、会計を行う医事課は保険証の確認が欠かせません。

外来の医療費

では病院で外来を受けた場合の医療費はどのように計算されるのか見ていきましょう。外来での受診の流れはまず初めに受付を行い、保険証確認し画面に登録します。その後診察・検査・処置・処方・注射などがあります。最後にそれらの医療費の計算(算定)を行い支払いになります。外来での算定は主に出来高計算になります。出来高計算とは診療報酬早見表にのっとり、診療項目それぞれの点数を足して医療費を算出します。1点→10円

例を用いて実際に算定をしてみましょう。

  • 診察:200点
  • 採血:300点
  • レントゲン:100点
  • 注射:300点
  • 処方:100点
  • 合計点数:1000点

以上のような診療を受けた場合、総医療費は10,000円となり、負担割合が3割だとすると本人は3,000円、保険者(国保の場合市町村・国保組合)から7,000円支払われます。

レセプトについて

レセプト(診療報酬明細書)とは保険者に対する請求書です。このレセプトをもとに保険者(支払い側)が医療行為の必要性を審査します。審査が無事通ると医療費が病院に支払われます(収入)が、審査が通らなければ医療費は支払われず減点となります(損失)。減点されないために医事課ではレセプト業務と言って毎月月初にレセプト点検を行っています。

レセプトが減点されるのは次のようなことが挙げられます。

  • 適応疾患が記載されていない
  • 診療内容の過剰・重複
  • 不必要だとみなされた場合 etc…

意外とカンタン? レセプトの学習と資格|医療事務|資格の学校TAC[タック] (https://www.tac-school.co.jp/kouza_iryou/iryou_kaisetsu/column_reception_learning_and_qualification.html)より引用

上記の図がレセプトと呼ばれるもので保険者はレセプトをチェックしています。

例えばどんなところを査定しているのかというと、肝硬変症という症状の疑いの患者さんだったら胸腹部の超音波検査をしていたり、HbA1cという血糖値の高さを図る検査を行っているのに、肝機能異常疑いなど関係性が薄い検査をしていないかなど様々な観点からチェックしています。

入院の医療費

入院にかかる医療費は外来での計算方法とは違う方式をとっていることがあり、私の病院ではDPC/PDPS(診療軍分類に基づく支払い方式)をとっています。Diagnosis(診断)、Procedure(治療・処置)、Combination(組み合わせ)、PDPS(Per-DiemPaymentSystem:一日ごとの支払い方式)の略で、傷病名によってある一定の点数が決められている検査方法であり、入院中に行った診療行為の点数を包括(まとめる)方式です。

DPCコードによって診断群分類と点数を設定しています。DPCコードは診療情報管理士にも深く関わっていますので興味がある方は下記の記事もご覧ください。

「包括評価」計算方式とは薬・検査・レントゲンなどの多くの診療内容の費用をまとめて計算する計算方法です。手術料など一部は出来高評価も併用しています。

包括点数について

包括点数に含まれるものとして

  1. 入院基本料
  2. 入院基本料など加算の一部
  3. 検査
  4. 画像診断
  5. 投薬、駐車
  6. 1,000点未満の処置

などです。逆に包括以外で算定するものとして

  1. 入院基本料など加算
  2. 指導管理など
  3. 在宅医療
  4. リハビリテーション、精神科専門療法
  5. 手術・麻酔
  6. 放射線治療
  7. 病理学的検査診断・判断料、
  8. 1,000点以上の処置

などです。これらは出来高加算されます。

DPC方式で包括評価はすべての患者さんに適用されるわけではなく、一部の患者さんは対象外となったりします。例えば、

  • 対象外保険(自賠責・労災による入院
  • 入院後24時間以内に死亡した患者
  • 臓器移植患者
  • 治験患者
  • 診療報酬改定で診察された一部の処置・手術を受ける患者
  • 高額薬剤を投与される患者

などです。

そんなDPCですが、出来高計算と比べて下記のようなメリット・デメリットがあります。

メリットデメリット
DPC過剰診療の抑止過少診療になる恐れ 治療内容と報酬のジレンマ
出来高患者の状態に応じた医療の提供 (過少診療の予防)過剰診療の恐れ 請求・審査の複雑化

診療報酬の改定

病院の主な収入源となる診療報酬ですが、2年に一度改定があり、診療行為の点数や算定要件が変わります。また介護保険は3年に一度改定されるので、6年ごとにダブル改定の年がやってきます。詳しくは以下の記事にも書いています。