企業用と家庭用のスイッチングハブの違いとは?

院内ヘルプデスクQoS, VLAN, スイッチングハブ

院内SEになるとネットワーク機器に触れることも多いですが、その中でもスイッチングハブは見る機会が多いです。家庭でもたまにスイッチングハブを使っているところもあるのですが、病院で使っているスイッチングハブは家庭用と比べると値段が段違いなほど違います。なぜこんなにも値段が違うのか気になったので今回はスイッチングハブについて調べてみることにしました。

スイッチングハブとは

パソコンやプリンターなどを有線接続する際に使用する装置で、イメージしやすくすると電源タップと似ています。

電源タップはコンセントの差込口を増やして電源につなげられる機器を増やしますが、スイッチングハブは有線LANの差込口を増やしてネットワークにつなげられる機器を増やすことができます。スイッチングハブでの注意点として、LANケーブルの始点と終点が同じ形なので両方ともスイッチングハブに挿してしまうとネットワーク全体がダウンしてしまうことがあります。

企業向けスイッチの機能

家電量販店でもスイッチングハブは売られていますが、大体が個人用で値段も1,000円台から5,000円以下のものがほとんどです。業務用と家庭用ハブの違いは様々ありますが、一番わかりやすいのは見た目だと思います。業務用ではLANポートが4~8ポートぐらいですが、業務用では16ポートが普通で多くなると24ポートや32ポートまたはそれ以上のものもあります。そして値段が1万円台からが通常になっており高い場合だと10万円、または100万越えするものも出てきます。

先ほどの電源タップの例で挙げれば、電源タップは家庭用でも業務用でもそれほど価格差はないのですが、スイッチングハブになると単にネットワークに繋げられるだけではなくそれ以外の機能が付加されるので高額になるようです。ここからはどのような機能があるのか紹介していきます。

オートネゴシエーション

一口にLANと言ってもその規格は様々であり、古い機器だと10Mbpsまでしか対応していなかったり最新だと10Gbpsまで対応しているものもあります。オートネゴシエーションはこの規格の種類を違いを自動的に判別して最適な通信モードを設定する仕組みです。これによりスイッチングハブに様々な機器が接続されていてもそれぞれが適切な通信モードでネットワークに参加することができます。 こちらの機能は家庭用でも搭載していることが多い機能です。

フロー制御

通信速度が異なる機器を相互に接続するスイッチには送受信するデータの流量を制御する機能、フロー制御があります。帯域の太いところから細いところにパケットを通そうとするとバッファがあふれそうになります。スイッチはバッファがあふれそうになると送り元に対し送信の一時停止を要求してバッファあふれを防ぎます。こちらも家庭用機器で搭載していることが多い機能です。

ネットワーク分離

家庭用と企業向けスイッチの一番の違いは接続台数が段違いに多いことにあると思います。私の病院でもPCやプリンターなどを合計すると1,000台以上はあるので、すべてを接続するには多くのスイッチングハブなどが必要です。

また、すべてのネットワークを分割せずに大きな一つのネットワークとしてまとめると通信速度の低下やトラブル時の影響範囲の調査に時間がかかるなど運用・管理面で支障をきたします。膨大な機器をつなげるだけではなく、運用・管理も考えてネットワークを分離する必要があります。

カスケードとスタック

大規模LANを構築する機能を紹介します。企業用のスイッチングハブでも24ポートぐらいが標準なので、数百台接続する場合には全然足りないです。そこで使われるのがカスケード接続とスタック接続です。

カスケード接続はスイッチングハブ同士をつなぎポート数を増やす方法です。先ほどの電源タップに例えると電源タップに電源タップをつなぐタコ足配線のようなイメージです。専用のカスケードポートというのがあるので、スイッチ間を接続してポート数を増やすことができます。

一方スタック接続というのは同じようにスイッチングハブ同士をつなぐのですが、専用のケーブルをつないでポート数を増やします。

VLAN

大規模なLANを構築する際に必要なネットワーク分離について説明します。

VLAN(Virtual LAN)の略で仮想的にLANを分割する機能で、物理的な1台のスイッチを論理的に複数のスイッチとして扱うことができます。またスイッチの設定変更でVLANを変えることも可能です。

VLANの分け方では「ポートVLAN」と「タグVLAN」という考え方が重要で、ポートVLANではスイッチングハブのポートによってVLANを分けるという方法と、スイッチングハブが異なる場合でもタグVLANによって同じタグをつけられたLAN同士は通信ができるという方法です。

障害と対策

スイッチングハブは普段見えにくいところに設置されていたりするので、気にかけないことが多いのですが、永遠に使えるわけではなくやはりいつかは壊れてしまいます。そういう場合に備えてスイッチングハブには障害へ対策する機能を備えているものがあります。

スパニングツリー

スパニングツリーとは3台のスイッチ間を三角形状に接続したりしてループ構成が生じてもフレームの永久ループを防止する機能です。スパニングツリープロトコル(STP:Spanning Tree Protocol)

STPを利用することによってスイッチ同士が通信を行うことにより自動的にループを検知し、ループを構成する経路のうち特定期間を無効にしてループを解消することができます。その一方で無効になった経路が代替経路になり通常は使用されませんが、障害発生時に通常経路で通信ができなくなると、代替経路を復活させ通信を継続することができます。

loop

例えば上記のようなネットワークを構築した場合、②と③間の経路は無効化されますが、もし①と③間の経路に障害が発生した場合、無効化された経路を復活させ、①→②→③という経路を通って通信が行われるようになります。

リンクアグリゲーション

携帯電話の4Gの頃からキャリアアグリゲーションという技術が話題になりましたが、スイッチングハブでもリンクアグリゲーションという似たような機能があります。先ほどのスパニングツリープロトコル(STP)で2本以上のケーブルを接続しても実際に使われるケーブルは1本で残りは無効化されますが、すべてのケーブルを束ねて1本の太い回線(仮想リンク)として使う技術がリンクアグリゲーションです。1本の回線では100Mbpsの速度でも4本束ねると400Mbpsで使ことができたり、1本が断線しても残りの回線で問題なく通信が行えるので可用性も向上します。

セキュリティやその他、管理機能

企業向けスイッチには情報セキュリティ対策やネットワークの管理技術などが次々と搭載されています。

セキュリティ

病院内にあるPCにはセキュリティソフトなどを入れて情報漏えい対策を行っていますが、スイッチングハブ自体にもセキュリティ機能があり、例えば接続された機器のMACアドレスを認証サーバで確認し、不正である場合は通信を遮断するといった機能があります。

QoS

最近はWeb会議システムが広く使われたり、オンデマンドビデオ学習など動画や音声でのリアルタイムコミュニケーションシステムが次々と導入されていますが、こういったサービスでは一定の速度でデータが流れ続けるので、そのデータの流れを止めない仕組みが必要です。 このような要求に対してQoS(Quality of Service)という機能がスイッチに実装されることがあります。QoSでは流れてきたデータを分類し、分類したデータを有線度に合わせて送信順位や量を調整することで、安定的な通信を行う仕組みです。家庭用のルータにも同じような機能が搭載されていることがあります。

管理機能

スイッチが数十台という規模にもなると、LANの管理を手作業で行うことは難しくなってきます。そこでネットワーク上の機器を管理するためのSNMP(Simple Network Management Protocol)と呼ばれるモノがあります。これにより遠隔でネットワークの状態を監視し、必要に応じて設定変更や再起動などを行い、障害への対応することも可能です。

その他

ほかにもLANケーブルだけで電源を供給できるスイッチ(PoE:Power over Ethernet)があったり、光ケーブルと呼ばれる通常のLANケーブルよりも長い距離(300m以上)にも対応できる差込口がある光スイッチなど多種多様なスイッチがあります。

ネットワークは難しい

ここまで企業向けスイッチについていろいろ調査してきましたが、様々な機能や利用方法、ポート数など一口にスイッチングハブと言ってもピンキリです。

ネットワークを構築する場合はこのような知識を持って最適なネットワークを考える必要があるので難しいことだと思います。さらに設定する際にも暗号のような設定ファイルを編集する必要があります。私はネットワークに関しては門外漢なので、全然わからないのですが、少しでもわかるようになりたいので、まずはネットワークスペシャリストの試験にでも挑戦してみようと思いました。