新型コロナウイルスワクチンについて

病院だよりCovid-19, アナフィラキシー, ワクチン

いよいよ新型コロナウイルスワクチン接種が始まりました。全国民が接種できるには時間がかかりそうですが、コロナ禍への大きな対策になると思います。

TVやインターネット、SNSなどのメディアで様々な情報が発信されていますが、科学的根拠がある情報元から正しい知識を得ることが重要だと思います。COVID-19ワクチン接種は強制ではなく自分の意思決定で決めるので、各自の責任の下判断をして実施することが望ましいです。

今回はコロナウイルスワクチンがどのような効果があり、副反応や接種体制について調べてみたのでご覧ください。

Covid-19ワクチンについて

現在(2021/05/17)、薬事承認された新型コロナウイルスワクチンはファイザー社製のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンです。このワクチンはコロナウイルスのスパイクたんぱく質というものの設計図が含まれており、これを注射することによりコロナウイルスが体内に入ってきたときに速やかに抗体を作り攻撃態勢を作れるようになるとされています。

今回薬事承認されたワクチンはコミナティ筋注と呼ばれるもので異例のスピード開発されましたが、通常のワクチン臨床試験と同様にすべての認証プロセスを省略することなく通過したもので信頼性は高いものと言えるものだそうです。

ワクチンを接種することで成人のCOVID発症に対する予防効果が約95%あるとされています。下の図はワクチンを接種した場合の発症割合をグラフ化したもので、赤い点はプラセボ群で生理食塩水を打ったグループで、青い点はワクチンを打ったグループです。初回接種後12日目過ぎからワクチン接種者の発症がほとんどなくなっていることがわかります。

出典:[第36回 ワクチンはどれぐらい効くのか? – Humony International

ワクチン接種しても発症する場合もありますが、重症化しにくくなると言われています。他者への感染予防効果、すなわち集団免疫が獲得できるかは不明ですが、接種者本人にはメリットがあります。

日本でのワクチン接種は皮下注射が多いですが、COVID-19ワクチンは筋肉注射が採用されています。海外では筋肉注射が一般的で安全性も確立されているそうです。私もワクチン接種を行いましたが、インフルエンザワクチンの皮下注射より痛みも少なくて楽だった印象です。

副反応について

ニュースなどでアナフィラキシーなどの副反応の情報が大きく取り上げられた不安になる方も多いと思います。アナフィラキシーショックとは発症後、きわめて短い時間のうちに全身に現れるアレルギー症状で、蜂に刺されたときなどにも発症する可能性があります。

今回のファイザー社製のワクチンは9,943,247接種中、50人にアナフィラキシーの報告があったとされています。これはパーセンテージに直すとおおよそ0.0005%ほどであり20万人に1人ほどの頻度になっています。一般的なワクチンのアナフィラキシー反応は100万人の1人ほどなので比べると頻度は高いと言えます。しかし、例えば抗生物質の一つであるペニシリンでは5000人に一人のアナフィラキシー反応が起こるのと比べると決して頻度が高いわけではありません。また新型コロナウイルスワクチンでアナフィラキシー反応が出た人の80%がアレルギー症状で既往歴があるなどアナフィラキシー反応が出やすい方がいたとのことなので、自分の体の状態を把握することや、お医者さんなどに相談して冷静にリスクを評価する必要があります。 もし、アナフィラキシー反応などの副反応が出た場合でも予防接種法に基づいた国からの救済措置を受けることができます。

その他にもだるさや、頭痛、筋肉痛など軽い副反応が予想されています。私自身も接種した翌日に筋肉痛のような痛みや微熱がありましたが、2,3日ほどで解消されました。

考慮が必要な接種者について

特に注意が必要な接種者として、妊婦や挙児希望(不妊治療)、授乳婦などが挙げられます。いずれも現時点で絶対的な禁忌ではないとされております。乳児が何らかの疾病状態になった場合にワクチン接種をしたからだと心理的にむずびつけてしまうことが考えられるので、主治医やパートナー、家族と相談・情報の共有などしていくことが望ましいとされています。

医療従事者への接種体制

医療従事者は新型コロナウイルス感染症患者や多くの疑い患者と頻繁に接する業務を行うことから、新型コロナウイルスへの暴露機会が極めて多く、また、医療従事者の発症及び重症化リスクを軽減は、医療提供体制の確保のために必要であるとされています。

私は患者さんの診療や看護などで関わることはないのですが、それでも負担軽減のために外来患者さんの健康チェックなどで直接かかわる業務があるのでリスクがないわけではありません。そのため医師や看護師などの接種終了後にワクチン接種をさせていただきました。

まとめ

スピード開発された今回の新型コロナウイルスワクチンですが、認証の手順を省略されたわけではなく、並行でプロセスを進めたため早期実用化が進んだものと言われています。

多くの情報がニュースやメディアで取り上げられて不安に感じる点もあるかと思いますが、正しい情報を取捨選択してリスクとメリットを天秤にかけて判断することが大事かと思います。

予約受付のシステムの不具合などでまだ全国民が接種できるには時間がかかるとは思いますが、あせらずマスクや3密を避けるなど感染対策をして、コロナ禍が収束するように私も一医療従事者としてサポートしていきます。