精度の高いカルテ管理で良質な医療サービスを!診療情報管理士について

医療の人々コーディング, 診療情報管理士, 診療記録

院内SEは自席でパソコンとにらめっこして作業していることが多いですが、実は病院内には他にもパソコンとにらめっこをしている部署があります。それが診療情報管理士という方々です。紙カルテ時代に作られたカルテに囲まれた部屋で、パソコンと向き合い作業を行っています。

今回は外部からは滅多に見ることができずに、病院内の職員でも知らないことがある診療情報管理士について調べてみました。

診療情報管理士とは

診療情報管理士とは、患者の診療情報が記録されたカルテの管理や診療情報の分析を行う専門職となっています。カルテが正確に書かれているかなどをチェックしたり、カルテの貸し出しや閲覧を管理しており、カルテの情報の統計を取りデータ化を行い、院内や県や国などに必要な情報を公開することが主な業務になっています。

診療情報管理士になるには

診療情報管理士は四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)および医療研修推進財団の共同で認定された資格で国家資格ではありません。しかし診療情報管理に関する唯一の資格であり合格率も60%ほどで難易度も高いです。

病院によっては無資格でも採用しているところもあるかもしれませんが、診療情報管理士として続けていくならいずれ必要になる資格と言えそうです。

業務内容

診療情報管理士の業務内容としては大きく分けて以下の2種類があります。

  • 入院診療記録の管理
    • モノの管理
  • 入院診療情報の管理
    • データの管理

どちらも似たような名前ですが、診療記録の管理はカルテに記載されたモノを管理することでカルテの編綴・貸出・開示が業務内容として挙げられます。もう一つの診療情報の管理はカルテに記載されたものデータ化、分析を行うことで、統計・検索・公開を行っていきます。どちらも元は医師や看護師、医療従事者のカルテ記録・データ入力から行うので、正確かつ詳細な記載が必要になってきます。そのためカルテ記載に不備があった場合や職員に訂正を求めたり、削除する権限なども持ち合わせています。

情報の公開先としてがん登録や臨床指標などを国や県に公開しています。その際重要となるのがコーディングと呼ばれる業務です。ICD(国際疾病分類)と呼ばれる分類方法に従って、カルテに記載されている病名を分類することがコーディングです。世界には12万以上も病名があるのですが、それを一つ一つ扱うよりもある程度大きなまとまりとして分類したほうがデータとして活用できます。診療情報管理士はカルテに記載された病名を整理し分類するため専門性が必要とされます。

診療録・診療記録とは

診療録は医師法によると遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならないと記載されており、5年間保存しないといけないと決められています。また、記載する内容も

  1. 診療を受けた者の住所、氏名、性別及び年齢
  2. 病名及び主要症状
  3. 治療方法(処方及び処置)
  4. 診療の年月日

と詳細に残さなければなりません。また、診療録だけではなく診療に関する諸記録として病院日誌や処方箋、手術記録や看護記録、エックス線写真なども入院診療計画書も診療録に添付する必要があります。

診療記録の重要性

なぜこのような診療録を事細かに残さないといけないのでしょう。それは以下のような理由があります。

  • チーム間の情報の共有
  • 医療行為の適切な遂行を証明
  • 患者ケアに関しての根拠を示す
  • 訴訟に対して、医療従事者を保護する

つまり、業務上多職種連携のために必要な側面と、適切な医療行為を行ったことの証明になります。

そのため診療記録を記載する際には注意が必要です。例えば具体的な数字を書くや主観的・感情的には記載しないなど、カルテ開示を求められた場合でも読み返しに耐えられるか大切です。

院内SEとの関わり

普段からPCを操作しているので、やはりPCの操作関係で問い合わせを受けることはほとんどありません。あったとしてもモニタやPCの故障などで呼ばれるぐらいです。また、診療情報管理士とは別に医療情報技師といったしかくを取得している方もいるので、システム面に強い方もいらっしゃいます。

しかし院内SEも負けておらず、難しい条件での統計などはデータベースを直接SQLで取得するなど院内SEならではの得意分野もあるので、お互いに助け合い業務を進めています。

良質な医療サービスを目指して

診療情報管理士は診療情報の管理と分析のエキスパートですが、その大本の情報は医師や看護師、医療従事者が書くカルテになっています。なのでデータの記載が誤っていたり事実を客観的にかけていなかったりした場合は修正や書き直しを依頼される場合があります。しかしこれも患者さんのための良質な医療サービスを目指すために必要なことです。

院内SEと同じかもしくは院内SE以上にデスク作業が多いので、腰痛など大変な面もありますが、診療報酬として診療録管理体制加算がつくなど医療体制の面で必要とされています。また働く場所も比較的大きな病院となり、看護師のように夜勤などはない場合がほとんどなので長く安定的に働けるのも魅力だと思います。