カルテ開示も見据えてしっかりと!看護記録について

医療の人々SOAP, 看護記録

電子カルテシステムには患者さんに関する様々な情報が記載されています。私は実際の患者さんを相手にすることはないので記載はしないのですが、記載されている情報を見るとA)とかS)とかアルファベットが入力されていることが多いです。入職して間もない頃は何のことか全然わからなかったのですがいくつか見ているうちに何となくアルファベットごとに記載されている内容が決まっていることに気づきました。

今回は電子カルテに記載されている患者さんの情報のうち、看護師さんが入力する看護記録について説明したいと思います。

看護記録とは

外来や病棟で看護師が看護実践を行う際に一連の過程をすべて記録したものです。少しわかりにくいですが、看護師が行う業務を記録したもので、例えば注射を打つ際に正しい手順や実施するに至った経緯や判断など看護実践を証明する大事なものとなります。

この看護記録の目的としては、一連の過程を記録することにより専門的な判断を基に看護実践をしたという証明につながります。また、看護職員の間で看護記録の内容を共有することにより、継続性と一貫性の高い看護を提供することが可能となります。さらに看護記録を振り返り、評価することでより質の高い看護実践へとつながります。

看護記録の原則・注意事項

看護実践の一連の過程を記録することが原則となります。看護計画の立案や実施、評価を記録していきます。そのために適宜に記録する必要があり、特に時間は正確に記載する必要があります。予期せぬ事態が発生した場合などには記録が重要となり、発見・発生の状況、観察項目、対処後の結果・反応など正確に記載することが重要です。

また、看護職以外の非専門職にも理解できるようになるべく専門用語を使わず記載することが必要になります。患者さんが退院した際に別の病院や介護施設などに情報提供した際に、今後の看護実践をどのようにするべきかを考える材料になります。

書くのが面倒そうな看護記録ですが、看護師自身を守るためにも役立ちます。

SOAP

看護記録を記載する形の一つとしてSOAPという書き方があります。それぞれ「S(subjective):主観的情報」「O(objective): 客観的情報」「A(assessment): 評価」「P(plan): 計画(治療)」という意味があり、4つの項目に沿って記載していきます。

Sでは、主観的情報で対象者が話した内容などから得られた情報などを記載します。Oは診察や検査などの客観的な情報を記載していきます。Aは、医師やS・Oの情報から総合的に分析や解釈を行った結果を記載し、PはAの情報に基づいて今後の治療の方針や内容、生活指導などを記載します。

例として、リハビリ記録で家事訓練を行う患者さんの記録を見てみましょう。

S)(自宅に)月曜日に行く?大丈夫かなぁ
Sでは患者さんの実際の言葉などを書いたりしてます。今回の例では自宅に戻る患者さんのリハビリを様子を記載しています。

O)独歩付き添いにてリハ室誘導。
Oでは実際に行った行動を客観的情報として書いていきます。患者さんが独歩(車いすや杖を使わず歩く)でリハビリ室へ行けてる様子がわかります。

A)自宅での調理訓練として火の扱い、食材カットの課題行い、問題なし。しかし当面は家事動作の際は家族の見守りが必要。
Aでは患者さんの行動から分析してどうだったかを書いています。家事動作は概ね問題ないようですね。

P)環境調査、家事動作訓練
Pでは今後必要なことや、治療方針などを書いていきます。患者さんが自宅で戻る際に必要なことして家屋調査や家事動作の向上などが挙げられるようですね。

このようにSOAP看護記録が記載されています。患者さんの話し方や実際の行ったことや、評価、治療方針などが記載されているので申し送りなどの情報共有が捗るかと思います。

DAR

もう一つの看護記録の書き方としてDAR(フォーカスチャーティング)というのがあります。これは「D(Data):データ」「A(Action):アクション」「R(Response)」のことで、この3つを使って何をフォーカス(F)するのかが重要になります。例えば患者さんの血圧上昇や転倒などの問題点にフォーカスを当てることが大切だそうです。

Dではフォーカスを支持する主観的や客観的な情報(データ)を記載します。Aでは医療従事者がフォーカスを支持するため実施したケア内容や指導などのアクションを書いていきます。そしてRではそのアクション(A)を受けた患者さんが返した反応(レスポンス)を書きます。

例えば、以下のように記載します。

F)転倒・転落リスク:転倒転落の危険度が高い。
  D)病院内独歩。ふらつきなし。
  A)経過観察。
  R)転倒なし。

上記のようにFにフォーカスする内容を最初に書き、それを支持する客観的な情報をDとして記載。Dを受けて医療従事者のケア内容を指導、判断などを記載し、最後に患者さんのレスポンスや結果などが書かれています。

別の例として

F)内服管理
  D)内服2日分自己管理中。
  A)内服確認。
  R)飲み忘れ、飲み間違いなし。6/17~3日分手渡す。

こちらの患者さんは内服管理について書かれています。内服薬を患者さん自身で管理するように指導を進めており、内服管理がきちんと行われているようなので、さらに直近分の内服薬を渡して続けていくようですね。

カルテ開示とは

こういった看護記録をしっかりと書く重要な理由の一つとしてカルテ開示というものがあります。患者さんやそのご家族は自分のカルテを医療機関に請求すれば見ることができ、さらにコピーが欲しければ貰うこともできます。これは個人情報保護法で定められており、医療機関は特別な理由がない限りカルテを開示しなければなりません。そのためカルテ上に医療従事者が個人的な意見を書いていたりすると、医療機関の印象が悪くなったり場合によっては訴訟に発展する恐れがあります。なので医療従事者は自分の意見や思いではなく、客観的な事実を書かなければなりません。

カルテ開示にはカルテを管理している診療情報管理士が応じます。当院ではカルテ開示の料金が1枚あたりで料金が増えていくので、金銭的負担を減らすために余分なスペースがないようにしなければなりません。その設定は電子カルテの導入業者が行い、運用していくうえでの調整を院内SEが行っていたりします。

まとめ

カルテに書かれているSOAPやDARなどの意味が分かりました。業務中に時々カルテを見る機会がありますが、人の言葉やアルファベットが書かれていて不思議に思っていました。カルテを見ていると様々な患者さんの情報や人間関係なども垣間見れるので、時には人生を考えさせられる場面もあったりします。

院内では長い病名や薬品名、検査などがあるので入力する労力の省力化などのためにこのほかにも院内の共通の略語などがあります。ほかにも病院独自の用語なども紹介していきたいと思います。