病院運営に重要な法律!医療法について
病院の運営にかかわってくる法律はどのようなものがあるでしょうか?医師法や薬剤師法など各専門職に関係する法律や、消防法や道路交通法、廃棄物処理法など一般的な会社にも関係してくるものもあります。
その中でも病院などで特有の法律となり、そして重要な医療法というものがあります。今回はこの病院運営には欠かせない医療法について説明していきたいと思います。
医療法とは
医療法は、病院・診療所などの開設・管理や医療計画・広告規制・安全確保、医療法人制度などを定めた医療提供体制に関する「法律」です。簡単に言うと病院運営などの管理に関する法律です。
医療法が規定している主な内容は以下のようなものになっています。
総則
医療法制度の目的や医療提供の理念、国及び地方公共団体の責務、医療提供する者の責務、医療施設の定義などが規定されています。
医療提供施設 | 定義事項 | 病床などの規模 |
---|---|---|
病院 | 第一条 | 20人以上の患者を入院させるための施設を有する |
診療所 | 第一条 | 患者を入院させるための施設を有しないもの又は、19人以下の患者を入院させるための施設を有する |
助産所 | 第二条 | 10人以上の入所施設を有してはならない |
地域医療支援病院 | 第四条 | 200床以上の病院 全国に600以上あり、沖縄だけでは10施設あります。 |
特定機能病院 | 第四条の二項 | 400床以上の病院 全国では80施設以上あり、沖縄には琉球大学病院の1施設だけです。 |
医療に関する選択の支援など
国及び地方公共団体、病院などによる情報提供体制や入院患者への情報提供、広告規制などについて規定されています。沖縄県は「うちなぁ医療ネット」で情報提供を行っています。
医療安全の確保
医療の安全を確保するための指針の策定、業者に対する研修の実施などについて規定されています。
① 医療安全管理体制の確保
② 院内感染対策体制の確保
③ 医薬品安全管理体制の確保
④ 医療機器安全管理体制の確保
病院、診療所などの開設・管理・監督等
開設のための許可・届け出の規定、院内掲示義務、管理者の監督義務、医療施設の法定人員・施設の基準などが規定されています。
例えば院内掲示義務だと管理者の氏名(院長)、診療日及び診療時間、建物の内部に関する案内などが規定されています。
また人員・施設基準では病院では3人以上かつ当直医となる医師が必要であるや、病院では各科専門の診察室、手術室、処置室、臨床検査施設、X線装置、調剤所、給食室、消毒室、洗濯室などを設置しないといけないなどが規定されています。
そのほかに病院では外部委託する場合がありますが、以下の8つの業務については、患者の安全面などの影響が大きいと考えられているので、その業者についても基準が定められています。
1.検体検査 2.寝具類洗濯 3.医療用ガス供給設備の保守点検 4.院内清掃 5.医療機器の保守点検 6.患者給食等 7.滅菌消毒 8.患者搬送
医療提供の確保・医療法人
良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図るために、医療計画や医療従事者の確保などについて規定されています。
また、医療法人に関する設立や管理、社会医療法人債、解散及び合併に関する事項などが規定されています。医療法人と社会医療法人の違いについては次の記事で解説したいと思います。
医療法改正の歴史
医療法は1948年の戦後、医療機関の量的整備が急務とされる中で医療水準の確保のため、制定されました。そのあと現在までに8回改正されました。主な改正の内容は以下の通りとなっています。
改正年 | 背景 | 主な内容 |
---|---|---|
1948年 医療法制定 | 終戦後、医療機関の整備が急務とされる中、病院の施設基準などを制定 | 〇病院の施設基準の制定 |
1985年 第1次改正 | 医療設備の量的整備が達成される中、医療資源の地域的方よりの是正・医療設備の連携 | 〇医療計画制度の導入 |
1992年 第2次改正 | 高齢化などに対応し、患者の症状に応じた適切な医療を提供するための医療施設機能の体系化 | 〇療養型病床群の制度化 〇特定機能病院の制度化 |
1997年 第3次改正 | 要介護者の増大に対し、介護体制の整備、医療機関の役割分担の明確及び連携の促進 | 〇地域医療支援病院制度の設置 〇総合病院制度の廃止 〇医療計画制度の充実 |
2000年 第4次改正 | 高齢化の進展に伴う疾病構造の変化を踏まえ、良質な医療を効率的に提供する体制の確立、入院医療提供体制の整備 | 〇療養病床、一般病床の見直し 〇医療計画制度の見直し |
2006年 第5次改正 | 質の高い医療サービスの提供体制の構築、医療情報提供の推進、医師不足問題などへの対策 | 〇都道府県の医療対策協議会の制度化 〇医療計画制度の見直し 〇社器量法人制度の創設 |
2014年 第6次改正 | 「社会保障・税一体化改革」に基づく効率的な医療、効果的な医療体制の構築 | 〇病床機能報告制度の創設 〇医療事故調査制度の創設 |
2015年 第7次改正 | 地域医療・地域包括ケアの充実の推進による地方創生、および医療法人経営の透明性確保 | 〇地域医療連携推進法人制度 〇医療法人制度の見直し |
2017年 第8次改正 | 医療に関する広告規制の見直し、安全で適切な医療提供確保の推進 | 〇医療機関のウェブサイトなどの取り扱い 〇医療機関への監督規定の整備 |
初回制定から現在まで改正を重ねて現在の医療法になっています。これらの医療法に従わないと罰金などの罰則を受けるので病院経営はこの医療法を順守していく必要があります。
医療法以外の法律
医療法だけでも細かな規制があるのですが、各専門職に関わる法律やその他一般企業にも関係する法律などがあります。
各専門職の法律
医師法、歯科医師法、薬剤師法、診療放射線技師法、理学療法士法及び作業療法士など…
その他順守すべき主な法律
消防法、個人情報保護法、道路交通法、廃棄物処理法、健康保険法、麻薬及び向精神薬取締法
このような法律を遵守するためにうちの病院では総務課が様々な規定や必要な集まりや催し物を開催しています。今度の医療の人々では総務課についてご紹介できればと思います。
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